球状炭化物鋳鉄(SCI) は,耐摩耗性に優れ,今後広範な応用が期待されている。しかしながら,機械構造材料として使用するため,不可欠な強度特性,特に,疲労強度について研究がほとんどないのが現状である。本研究では,バナジウム炭化物が球状に晶出した球状炭化物鋳鉄(SCI) を用いて疲労試験を行い,SCI の疲労強度およびその疲労メカニズムを明らかにすることを目的としている。
球状炭素物鋳鉄(SCI-VCrNi)
本研究で用いた球状炭化物鋳鉄(SCI) は,18-8 ステンレス鋼に10mass%V を添加することにより、下記写真のように基地組織中に球状のバナジウム炭化物(VC)を分散させ、高硬度かつ靭性面を改善した材料である。
球状炭化物鋳鉄(SCI) は実用化のための切欠き感受性の解明が必要不可欠である。今後、種々の切欠き形状を有する試験片で実験を行い、球状炭化物鋳鉄の切欠き感受性を解明していく。
疲労試験は、小野式回転曲げ疲労試験機及び平面曲げ疲労試験機を用いて、室温、大気中で行い、疲労強度を評価している。また、SEMによる破面観察により、疲労メカニズムを調査している。
回転曲げ疲労試験機
平面曲げ疲労試験機
疲労破面例
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄の疲労における切欠感度、野口徹、清水一道、小林智浩、日本機械学会論文集(A編)60巻575号(1994)38-43
Notch Sensitivity in Fatigue of Cast Iron,T.Noguchi,K.Shimizu,Transactions of AFS, Vol.97 Paper 89-92, 389-396 (1989)